今回の依頼先は終活関連のNPO法人。1ヶ月前のチカチカパフォーマンスで歌を気に入ってくれた女性のご主人が、たまたまNPOに携わっていて紹介された。NPOのセミナー(総会)で歌って欲しいという。
電話では何度も打ち合わせていて、YouTubeやHP等も見ていただいたが、実際にお会いしてはいない。あくまで奥様の「強い推薦」からつながった縁である。
しかし、この偶然からくる出会いには何らかの意味があることが多いので、大切にしなくてはいけない。開始は夕方だったが、スケジュール表は真っ白に空いていたので、ありがたくお受けした。
会場は都心のススキノ南端にある札幌エクセルホテル東急内レストラン。ホテルで歌う機会はあまりなく、一度も行ったことがない。3日前に降った記録的な大雪による交通渋滞が不安だったが、幹線道路はきれいに除雪されていて、流れはスムーズだった。
集合時間の18時ちょうどにホテル到着。さっそく担当のSさんと面会し、名刺を交わす。ただちに機材のセットにとりかかる。ホテル側のマイクとアンプが用意されていたが、使い慣れた持参の機材を使うことにした。
三々五々と集まってくる参加者の方々と、順次名刺を交換。同時に、経歴書とリクエスト一覧を手渡す。すべてSさんからの配慮で、これを機会に多方面の方々に「営業活動」させていただけるいう。
交換した名刺が計15枚。遠く美唄や旭川から来た方、葬送関係はもとより、仏具販売業、弁護士、行政書士、社会福祉士、不動産業、WEB代行など、他ジャンルの方がいらした。人の死には、あらゆる業種の方々がからんでいるということなのだろう。
ライブ開始は18時半の予定だったが、やや集まりが悪く、少し遅れそうだった。名刺を交わした方の中に中島みゆきのファンの方がいて、「糸」が大好きだという。予定にはなかったが、せっかくの機会なので、マイクテストをかねて歌うことにした。
場の「つなぎ」という意味もあったが、長いブランクと慣れない場、初めて会う人ばかりという悪条件で、やや緊張している自分があった。本番前に少しでも歌い、気を慣らしておく必要がある。
会場の音響は非常によかった。調整のかいあって、喉の状態も悪くない。リクエストしてくれた方には大変喜んでもらえた。
開始にはまだ時間があり、続けて叙情系の「灯台守」を歌う。静ひつな気分にぴったりの歌で、開始前のBGMのような位置づけだった。
10分ほど遅れて会が始まる。Sさんの挨拶と乾杯の音頭のあと、ただちに私の歌という手はずだった。「セミナー」といっても、この日は特に話合いや講習等はなく、忘年会をかねた総会、といった印象である。
開始は18時43分あたり。打合せ通り、ぴったり30分で8曲を歌った。
「大空と大地の中で」「バラが咲いた」「酔歌」「エーデルワイス」「ブルーライト・ヨコハマ」「吾亦紅」「熱き心に」「高校三年生」
Sさんから出ていたリクエストは「吾亦紅」のみ。ラストで全員で歌う曲が欲しいとの要望があり、相談のすえに「高校三年生」に決まる。歌詞は事前に印刷して種類に添付した。
他の構成はお任せいただいたが、「就活のNPO」ということで、全体的に叙情性の強い構成に落ち着いた。おおむね場の気分には合っていたと思えるが、もう少し賑やかな曲、たとえば「まつり」などがあってもよかったかもしれない。
歌謡曲系が多めだったが、結果としてマイクテストで歌った「糸」「灯台守」で全体のバランスをとった格好。こうした場ではマイクテストも単なる飾りではなく、ライブの一部である。
参加者は15名ほどで、全員が男性。年代的には私と同年代か、やや若いといったところ。すでに乾杯も終わっているので、苦手ないわゆる「酒席」だったが、全くお酒を飲まない方もけっこういて、町内会の宴会のような気分では全くない。
無駄なMCは極力減らし、飲食をさまたげないよう、場のBGMになりきるように歌ってみたが、初めてに近いこの試みは、ある程度成功したと思う。手拍子とかけ声で盛り上がるばかりが酒席ではないということで、1曲歌い終えるごとに普通のライブと変わらぬ温かい拍手をいただいた。
これといったミスもなく、無難に歌い終える。緊張する場だったが、ここから新たな縁が生まれる予感がしないでもない。そうなるとよいが。