長男夫婦は二人とも勤務がシフト制で不規則な反面、平日でも休みが取りやすい。毎日が日曜日状態の私たち夫婦も同じ立場で、平日のほうがホテルも取りやすく、観光地や道路も空いている。この利点を活かさない手はない。
洞爺湖温泉へは自宅から120キロ弱で、午後出発で充分間に合う。ずっと雨の予報だったが、直前になって変わり、好天に恵まれた。
長男夫婦は最近古い車を処分したばかりで、今回も運転担当は私。13時ちょうどに家を出て、途中で長男夫婦を拾い、中山峠経由で国道230号を走る。春に夫婦で巡ったカルルス温泉とちょうど逆のコースだ。ほぼ予定通り、16時30分に宿泊地の洞爺サンパレスに着いた。
1978年開業のホテルだが、1階ロビー周辺は改装したばかりで新しい。10畳に広縁とバストイレつきの部屋も掃除と手入れが行き届いていて、古さは感じなかった。
温泉好きの妻とお嫁さんは、ただちに大浴場へと直行。息子もそれに続いた。普段からカラスの行水の私は、部屋で一人お留守番。
1週間前に納めたばかりの仕事に修正が出る可能性があり、今回は仕事をこなせるノートパソコンを持参した。常用のPCからファイル一式を転送し、ソフトの更新もして備える。事前の調べで、全室でWi-Fiが使えると分かっていたので、そのテストをやってみた。
バッテリが劣化して使えず、電源は持参のケーブルでコンセントからとる。特に設定もなく、簡単にネットにつながった。メールをまずチェックしたが、取引先に臨時休業の連絡をしておいたせいか、仕事のメールは入っていない。
お嫁さんが戻ってきたので、留守番役を交代して地下1階の大浴場にむかう。温水プールもあるが、カナヅチの私には用がない。大浴場は清潔で広く、温度も程よい。ジャグジーや露天風呂を含めて、大小7つほどの浴槽があった。
全て湖に面しているが、すでに日は暮れていて、チラホラと対岸の灯りが見える程度。夏場は連日の打ち上げ花火が見られるが、それも終了して静かな湖面だ。
夕食はレストランで18〜20時までのバイキング方式。少し遅れて18時半から食べ始める。
和洋中華なんでもありで、何を食べても美味しい。味付けや素材は予想をはるかに超えていた。夕食のバイキングは初めてだったが、好きなものを好きなだけ食べられるので、決められたパターンよりは自分に向いている気がする。
これまたよりどりみどりのデザートも存分にいただき、20時ぎりぎりまで食事を堪能。その後、ロビーで無料公開されるタヒチアンダンスを観た。
ショーは30分強だったが、男女11人が交代で間合いなしのダンスが続く。進行役の一人だけが日本人だったが、他はすべて現地人による本格ダンス。激しいリズムに終始圧倒された。
ロビーは見物客でいっぱいで、その数200〜300人ほど。客の多くは外国人(おそらく台湾)で、日本人の姿はごく少ない。
夏のキャンプで楽しく遊んだトランプを部屋でやるつもりでいたが、なぜか忘れた。0時くらいまでテレビやネットでめいめい過ごす。ほとんど物音のしない静けさのなかで、眠りについた。
ふと目覚めたら、時計はすでに6時近く。朝風呂は5時から入れるが、昨夜は0時近くまで起きていたせいか、家族全員寝入ったままだ。
誰かの目覚ましが6時に鳴って、ようやく起き始める。一人二人と朝風呂に消え、例によって私は留守番役。
真っ先に行った妻が戻ってきて、留守番を代わるから風呂に入ってくれば?と言う。暑くて熟睡できず、風呂はパスする気でいたが、思い直して入ってきた。
昨夜は真っ暗だったが、見事に晴れ上がった湖面が大浴場のガラス窓から全面に広がっている。雲ひとつない快晴で、遠くには薄っすら雪化粧した羊蹄山が。洞爺湖には何度も来ているが、これほどきれいに晴れた展望は記憶にない。
朝食は昨夜と同じレストランでのバイキング。7時から始まっていたが、45分ほど出遅れた。さすがにメニューは重複するだろうと思っていたら、ガラリ変わっていた。
和洋食そろっていて、長男夫婦は洋食を、妻と私は和食を選択。相変わらず何を食べても美味い。珍しくご飯をお代わりしたら、妻が驚いていた。
前夜同様に、制限時間の9時ぎりぎりまでデザートやコーヒーでくつろぐ。これまでどこか軽くみていたふしがあったが、バイキングの楽しみ方を今回会得した気がする。
部屋に戻ってチェックアウトの10時近くまで仮眠。さすがに睡眠時間が足りないらしい。少しでも休んで、運転に備える必要があった。
事前の希望で、この日は近隣の有珠山ロープウェイに乗る予定だった。ホテルを出て湖の周遊道路を東に向かったら、途中で広いパーキングエリアを発見。「洞爺湖八景」と看板にあり、眺めが抜群なので、車を停めて写真を何枚か撮った。
その後、昭和新山の麓にあるロープウェイ乗場へと向かう。出発前にネットで調べて印刷しておいたクーポン券を使い、10%引きの1,350円で乗車。乗場までの経路がちょっと分かりにくいが、15分おきに出ているので、待たされることはない。
山頂駅には10分ほどで到着。とにかく天気がよく、眼下に洞爺湖と昭和新山の大パノラマが広がっていて、まさに絶景。
春や夏の緑でなく、秋の紅葉もすでに終わっていて、冬景色には早い。葉を落とした木々の褐色と、湖の群青、そして溶岩の赤褐色との対比が何ともいえないジオラマのような効果を創りだしていた。
山頂駅からさらに遊歩道があり、有珠山火口原展望台まで行けるが、かなり傾斜が厳しい。せっかくの機会なので長男夫婦がぜひ行きたいという。腰痛も回復した私も昇る気でいたが、膝に不安のある妻は駅で待っているという。やむなく3人だけで昇った。
途中、お嫁さんがちょっとバテたが、長男の後押しで何とか頂上に到達。広い展望台があり、反対側に噴火湾(太平洋)が広がっている。この日は視界も抜群で、遠くの駒ケ岳まで見通せた。
振り返ると洞爺湖の湖面。洞爺湖と噴火湾の両方が同時に望める、珍しいポイントだ。
そこから有珠山の外輪山を巡る遊歩道もあったが、かなり険しいのでさすがにパス。ロープウェイで麓まで降りて、南側のオロフレ峠経由で太平洋側に抜ける。
有珠山出発は11時40分で、オロフレ峠を洞爺湖側から走るのは初。狭い峠道にやや不安があったが車が極端に少なく、道は完全に乾いていて、快適に走り抜けた。
およそ1時間で登別に到着。休憩なしで東に走り、13時40分に昼食の目的地である苫小牧のカフェ「おむかふぇ日和」に着いた。
実はこの店、2年前の同じ時期に、やはり長男夫婦とカルルス温泉に一泊した折、帰りに寄った店。当時は支笏湖畔にあり、オムライスが絶品で家族にも大好評だった。
今年5月の妻との旅行時にも立ち寄ったが、数日前に移転していたことを知る。その後移転先をネットで調べ、この日の再訪となった。2年前と少しも変わらない特別なオムライスの味を堪能。これを食べるために帰路はわざわざ遠回りしたが、そのかいがあった。
1時間ほどくつろいで出発。36号線経由ではなく、北へ向かって支笏湖経由で帰ることにする。日没が迫って次第に雲が広がり始めたが、支笏湖周遊道路を走っていると、雲の隙間から一筋の光が湖面に差し込む。旅の締めくくりに相応しい印象的なシーンだった。
2日間の走行距離が315キロほど。腰痛の再発もなく、天候にも恵まれて、記憶に残る楽しい誕生祝いとなった。