2014年3月9日日曜日

介護施設でフォーク

 20数キロ離れた、少し遠い市内のディサービスで歌ってきた。昨年7月にネット経由で初めて依頼された施設で、いわゆる「最も強い2度目の依頼」である。
 全国展開している施設で、過去にも同系列の施設で数多く歌わせてもらっている。新し目の曲を好む利用者層と、どこか相性のよさを感じる。

 前回も大変な盛り上がりだったが、その傾向をよく分析したうえで、春を意識した構成で臨んだ。


 開始20分前に到着し、10分前にスタンバイ。50名ほどの聴き手もすでに席についていたので、予定より早めの14時55分にスタート。以下の14曲を歌った。

「北国の春」「花(滝廉太郎)」「真室川音頭」「リンゴの唄」「年下の男の子」「二人は若い」「みかんの花咲く丘」「浪花節だよ人生は」「夜霧よ今夜も有難う」「青い山脈」「かなりや」「あの素晴しい愛をもう一度(リクエスト)」「なごり雪(リクエスト)」「まつり」

 1週間前の有料老人ホームと似た内容だが、施設の聴き手に合わせ、微妙に修正を加えている。叙情的な曲や洋楽を減らし、手拍子の出やすい明るめの曲を中心に、以下の入替えを行った。

「うれしいひな祭り」→「花(滝廉太郎)」
「いい日旅立ち」→「リンゴの唄」「年下の男の子」
「幸せなら手をたたこう」→「二人は若い」
「瀬戸の花嫁」→「浪花節だよ人生は」
「サン・トワ・マミー」→「夜霧よ今夜も有難う」
「高校三年生」→「青い山脈」「かなりや」
 ステージに立つと、前回となぜか微妙に空気感が異なる。開始前に進行の方が「昨年も歌っていただきましたが、覚えている方」と振っても、会場の反応はゼロ。どうやら前回とは曜日が異なり、利用者の大半が入れ替わっていたようだ。
 ともかくも歌い始めると、出だしの数曲は反応がいまひとつの印象だった。場がようやく乗り始めたのは、「リンゴの唄」あたりから。過去の実績が少なく、リスクの大きいアイドル系ソング「年下の男の子」で大いに湧く。状況次第では1番でやめるつもりでいたが、歌ってよかった。


 その後は順調に進む。「なるべく長く」との要望があったので、12曲を当初準備していた。11曲終わった時点で「あと2曲くらいで終わります」と伝え、不動のラスト「まつり」以外に何かもう1曲…、と電子譜面を繰っていたら、その気配を察した進行係のTさんが、「菊地さん、実はフォークのリクエストが事前にあったのですが、歌っていただけませんか?」と尋ねてきた。

「何でしょう?曲にもよりますが」と応じると、実は「あの素晴しい愛をもう一度」が聴きたいとの声が複数ありました、と言う。一瞬耳を疑ったが、どうやら間違いない様子。「本当に歌っていいんですか?」と確かめつつも、指ではもう譜面を検索していた。
 探しながら、「実は1年前にも《なごり雪》のリクエストが飛び出して、びっくりしたんですよ」と伝えると、《なごり雪》が演れるんですが、ならばそれもぜひ聞きたい、と重ねてのリクエスト。思ってもみなかったフォークの連発である。

 実はこんなこともあろうかと、先日電子譜面内の全レパートリーを、50音順に6分割したばかり。「ALL4_TaNa」などのように、それぞれ頭文字を含むファイル名をあて、検索しやすいよう1ファイル内の曲数も100前後に抑えてあった。
「あの素晴しい愛をもう一度」は10年近く人前では歌ってないが、譜面は確かに「ALL1_A」のファイルに入っている。20秒ほどであっさり探し当てた。
 半信半疑だったが、いざ歌ってみると大変な盛り上がりよう。続けて歌った「なごり雪」も同様の反応。折しも窓の外には春の雪が舞い始め、絶好の借景である。ツキも味方していた。
 一種異様な雰囲気のなか、ラストの「まつり」になだれ込む。確実に計算できる曲で、介護施設系ライブのラストは、当分この曲でいいような気になってきた。
 終わってみれば50分も歌い続けていた。進行とは別の職員が近寄ってきて名刺を差し出され、来月別の施設に移動するが、ぜひそちらにも来ていただけないか、との要望。快諾した。
 ディサービスは曜日によって利用者が変わるので、うまくやり繰りすれば「聴き手に飽きられる」という最大の不安を回避できる。新しい曲への抵抗感も少なく、今後の進むべき方向かもしれない。

「介護施設でフォーク」という足音は予想よりもはるかに早く、確かな足音でディサービスからやってきた。