2012年8月1日水曜日

最後の開業記念日

 独立開業30年の記念日であった。30年前の今日、前夜まで妻と二人でアパートの一室で宛名を書き、封をした開業案内DM200通をポストに投函した日である。いろいろあったが、滑ったり転んだりしつつ、ともかくも30年間事業を続けてきた。

 妻がお祝いにと買ってきてくれたサッポロ黒ラベルの缶を開け、ありあわせの肴をテーブルに並べて、ささやかな宴を妻と二人で開いた。普段は糖質ゼロの発泡酒だから、これでも立派な祝いの膳なのである。


 記念日といいつつ、この3ヶ月ほど、主たる業務であるはずの建築デザイン系の仕事が全くない。以前と違って追われるものがこれといってなく、つましく暮らせば何とかやっていける我が身。仕事が切れたとて営業に勤しむこともなく、なすがまま、あるがままの暮らしである。
 何があるのか分からないのが人生ではあるが、感触としては今日が最後の開業記念日となる可能性が高い。悲しいが、どんなものにも終わりは必ずやってくる。それが揺るぎない宇宙の摂理だ。問題は生きてゆく中で、それを意識するかしないかだ。
 先日参加した小学校の同窓会幹事会で、渡されたリストに灰色に塗られた名前がいくつかあった。(なんだろう…)と思いつつ注釈を見ると、死亡者を意味するものだった。
 全270名ほどのリストのうち、分かっているだけで10名を超える方々がすでに鬼籍に入っていた。住所判明者は30%ほどなので、実数はこの数倍であろう。あの顔もこの顔も、すでにこの世にはない。そういう年代なのである。
 元気で生きていられて、なにがしかの社会活動に関わっている我が身を、ひとまずは喜ぶべきではないか。