2012年8月18日土曜日

過去にしがみつかぬ歌

 近隣のグループホームでの訪問ライブを無事に終えた。インターネット経由で初めて依頼された施設だったが、たまたま車で15分ほどの近距離。時間も14時開始と余裕がある。
 こんなときに限って忘れ物をしがちなので、久々に「備品チェックリスト」を取り出し、出発前に入念に指差確認した。
(以前にこれを怠って、マイクを忘れた苦い経験あり)

 13時40分に先方到着。夏まつりイベントの一環だったが、周辺地区の子供たちを招いたスイカ割り大会などがあり、玄関ホールの椅子でしばし待機。開始5分前にようやくステージとなる食堂に移動し、素早く機材をセット。14時ちょうどからライブを始めた。
 開始前に担当の方から私の経歴に関し、簡単な紹介がある。最近、事前に「経歴書を送って欲しい」との依頼が急増している。

 以前はこうした肩書き的経歴にさほどの関心はなく、歌い手にとっての勝負は歌だろう、という拘りもあり、かなり適当に出していた。しかし、最近は少し考えを改め、先方が求めているであろう内容に沿って記すようになった。
 20代前半からギター弾き語りを始めたこと。2004年からボランティア活動を始めたこと。得意なジャンル。以前はここまでだったが、最近は「札幌駅地下歩行空間パフォーマーライセンス取得」を必ず書き添え、過去に出演したビックなイベント、さらには出演したテレビ・ラジオの放送局名も記すようにしている。


 しかし、あれこれいっても結局は歌だ。どんなに輝かしい経歴を並べ、過去の栄光にしがみついたとしても、いま歌う歌が貧しければ何の意味もない。
 ということで、この日は職員やご家族の方々を含めて40名ほどの聴き手の前で、以下の13曲を35分で歌った。

「草原の輝き」「瀬戸の花嫁」「宗谷岬」「ゆりかごの歌」「砂山」「二人は若い」「エーデルワイス」「月がとっても青いから」「埴生の宿」「お富さん」「青い山脈」「丘を越えて」「知床旅情」
 担当のKさんからは事前に「地域の子供さんも来るので、唱歌を多めに」との要望。しかし、子供たちは皆お土産を貰うと、歌の前に帰路についてしまった。よくあることだが、状況の急変である。
 5曲目までは予定通りに歌ったが、途中から路線変更。アニメソングを外して予定にはなかった手拍子系懐メロの「二人は若い」を試しに歌ってみたら、これが大受け。合の手を聴き手に求めたことも幸いして、場は一気に盛り上がった。
 このまま懐メロ連発で突っ走ろうか…、と一瞬思ったが、思い直して予定の唱歌に懐メロを随所に混ぜ、無難に進めた。

 施設母体がグループホームなので、やはり手拍子系の歌が好まれた。あいにく電子譜面内蔵の中華Padが修理中で、譜面も用意してなかったが、「お座敷小唄」「炭坑節」「真室川音頭」「ソーラン節」あたりも間違いなく受けただろう。
「ずっと聴いていたい」という嬉しい声援も飛び出したが、施設側の都合もあって35分でお開き。それでも予定より3曲も多く歌ったので、聴き手は大満足の様子だった。
 終了後、4~5名の入居者の方から「また来て歌ってください」と順に頭を下げられ、応対に忙しかった。職員の方々からも「思わず職務を忘れて聞き惚れた」と労われた。初訪問の場としては大成功である。

 この日、歌ってみて不思議な感覚に陥った。これまで出てなかったような自分の声を聞いた気がした。うまく書けないが、「強く響く」感じの声だ。およそ5ヶ月ぶりの訪問ライブということがそうさせたのか、その正体は不明。今年になってさまざまな修羅場をくぐり抜けてきた成果だとしたらうれしい。