2008年9月17日水曜日

寄り添うアート

 私の生まれ故郷、幌加内町を拠点に活動を続けるステンドグラス作家、吉成洋子さんが札幌で1ヶ月にわたる共同展を開くと聞き、仕事で都心に出たついでに見てきた。
 吉成さんは去年も札幌で共同展を開いているが、見そびれていた。今回は8月に故郷に墓参りに訪れた折、半ば強引にお宅を訪問し、案内状を送っていただくようお願いしてあった。
 場所は札幌市中央区南6西18にある「カフェ・アンジュ」というギャラリーとカフェをかねた店である。緑に囲まれた住宅街の真ん中に、何気なく建っている。事前の下調べがなければ、見逃してしまうほどだ。
 普通の民家を改造し、1年前に新規開店したとか。広い敷地の内外に、所狭しとさまざまな作品が並んでいるが、一見雑然としているように見えて、実はある規律、統一感がそこにある。


 今回は「四人展」と名づけた共同展で、吉成さん以外の3人の作家は以下の通り。(敬称略)

・吉成翔子(金属工芸)→吉成さんのお嬢さん
・久守有子(モザイクアート)
・内海眞治(オブジェアート)

 4人の作品が内外の空間に柔らかく馴染んでいる。人の意志に寄り添うようなアートだ。


 吉成さんの作品は、幌加内町の大自然を色濃く映し出している印象がした。雪の妖精をイメージさせるキャラクターが、随所に登場する。

 下の作品は自宅を訪問した際に直接説明していただいたが、ガラスや色タイルのかけらを木材で作った型枠に置き、モルタルを流し込んで固めたものだという。モルタルには一部色粉を混ぜているだろうか。
 どの作品も優しく、そして染みるような鮮やかさがある。


 シゲキ的な作品群に囲まれ、同行した妻もカルチャーショックを受けたようだ。一通り作品を見たあと、珈琲を二人で飲んだ。カフェの内外は空間がゆるやかにつながっているが、室内から庭へとつながるウッドテラスに設けられた席を妻は選んだ。
 この珈琲が、これまで札幌では一度も飲んだことのない驚きの味。一口飲むなり、「これ、セシボンの珈琲よ」と妻が言う。どれどれと飲んでみると、確かに30数年前、恋人時代の妻と待ち合わせによく使った有楽町のセシボンという高級喫茶の珈琲に酷似している。当時で1杯400円もしたが、実に美味い珈琲だった。
 経営者の方に直接聞いてみたら、「シグリ」というニューギニア製の豆をベースに、数種類をブレンドしたオリジナルだとか。深いがさり気なく、そして爽やか。何杯でも飲みたくなる。
 帰宅後に調べてみたら、豆が100gで600円以上もする高級品。これで1杯450円とは信じられない。

 不思議な縁から、思わぬ場所で不思議な店に出会った。自宅からは少し遠いが、シグリの珈琲(メニューでは普通のブレンド珈琲)を飲みに行くだけでも価値のある店だ。