結婚記念日には都心に出かけ、食事をするのがこのところの恒例行事になっていたが、事業の立て直しに追われていた去年は、これといったイベントをやっていない。
事業回復の確かな兆しを感じる今年は、晴れて再開できるというわけだ。
数日前からネットや古いスクラップを使い、どこに出かけようかあれこれ調べていたが、寒さが少し戻ったこともあり、都心のホテルにテナントとして入っているしゃぶしゃぶ店に行くことに決めた。以前にネット仲間で一度だけ行ったことがあり、安い割にはなかなか美味い店だ。
偶然だが、名前が「三十三間堂」。33年目のイベントとして、これほど相応しい場はない。
しばらく行ってなかったので、念のため、昨夜確認の電話を入れた。するとつながったのは、なぜかホテルのフロント。胸騒ぎがして店の事を尋ねると、都合で撤退したという。
栄華盛衰は世の常とはいえ、あてが外れてかなりガッカリしてしまった。しかし、事前に電話で確認したのは正解だったと、前向きに考え直す。
急ぎ、次なる候補を見繕う。「札幌駅の近くで買物をしたいので、駅周辺がいい」と妻がいうので、選択肢は限られていた。
手元にあったチラシから、ようやく一つの店にたどり着く。たまたまだが、3月末まで限定の割引クーポンがネットから入手できた。サイトからそのクーポンを直接プリンタに印刷し、翌日に備えた。
一夜明けた今日、妻は昼前からそわそわ落ち着かない。普段はめったに着ない友人からもらった高級ニットセーターを着込み、30周年の真珠婚にプレゼントした真珠のネックレス(私にしては高価な品)なんか首にかけている。
上着は短めの白いショートコートと、これまたバブル期に私がプレゼントした高級イギリス製スカーフ。ううむ、我が妻ながら、なかなかキマっている。
私も妻のイデタチにある程度あわせ、ふだんはあまり着ないジャンバーをはおり、同色のハンチングをかぶって洒落てみる。
まだ午後3時前だったが、珍しくオヤツもコーヒーも抜きにし、歩いてイソイソと最寄りのJR駅にむかった。
JRに乗るのも1年ぶりくらいかな、などとと話すうち、あっという間に札幌駅に着いた。
改札に出るまでのコンコースで、不思議なデザインのベンチを発見する。時間は充分にあるので思わず立ち止まり、シゲシゲと観察。デザイナーとしての虫が騒ぐのだ。太い金属パイプと、丸太のようにごつい集成材とで出来たシンプルなデザインがいかにも良い。
近寄ってなで回し、実際に座ってみると、要所に丸みをつけてあるせいか、座り心地もなかなかのもの。私があまりに熱心なので、妻がすかさず写真を撮ってくれた。
駅周辺の買物に関しては妻のほうがはるかに詳しいので、夕食の時間まで、黙って妻のあとをついて回った。
大丸百貨店の中にある書店で、妻が欲しいというヨン様系の本を一冊買う。ささやかだが、今年の私からのプレゼントだ。
途中、帽子の専門店を見つけ、入ってみた。以前からチャコールグレーのハンチングが欲しいと思っていたが、「安いこと」(できれば2,000円以内)が必須条件である。いまのハンチングは1,000円という破格値だったが、合わせる服が限定されるという難点があった。
ハンチングは好きで、ライブでも時々かぶる。父も若い頃にかぶっていたが、なかなか似合っていた。聞けば亡き妻の父もよくかぶっていたという。
さすがに都心とあり、色はイメージぴったりの物がいくつかあったが、価格はすべて5,000円以上。さすがにそこまで投資する気はなく、「私が買ってあげる」という妻を押しとどめ、またの機会を待つことにした。
(長いので、次回に続きます)