2008年3月31日月曜日

33年目の春~後編

(前回の続き)
 時間にしばられない気ままなウィンドウ・ショッピングを充分堪能した私たちは、夕方5時過ぎ、開店直後の居酒屋「花ごころ」に入った。

 ネットである程度の事前情報はあったが、居酒屋といっても雑然とした雰囲気は一切なく、どちらかというと割烹風のたたずまい。
 店に入った直後、妻がバックから前日に印刷してあったクーポン券を取り出し、「ネットで探し当てました」と従業員に素早く手渡す。「クーポン券は会計時に」とネットには記載があったが、とかくトラブルになりがちなのがこのクーポン券。事前に提示しておくのが無難というものだ。
 店内に大部屋はなく、通されたのはこじんまりとした4人がけの独立席。すべての席が堀コタツ式になっていて、足元がかなり楽だ。
(ちなみに、入口に銭湯のようなカギ付の下足箱があり、靴はそこに納めてしまう)
 壁はすべて和紙貼で、隣との仕切りは障子。背後の間接照明もあんどん風になっていて、あくまで和風のデザインが貫かれている。

 外は結構寒かったので、最初に鍋物風の「ゆり根とロールキャベツの釜」「揚げ出し豆腐ウメしそ風」を頼み、まずは赤ワインで乾杯を交わす。
 以降、自宅では簡単に食べられないものを中心に、気のむくままにあれこれ頼む。後半に頼んだ「クリームチーズの味噌漬」がかなりいけた。

 味は全体的に上品な薄味。値段は400~600円といったところだが、量は少ない。女性客が中心というのもうなずける。私は小食なので充分満足したが、「モリモリ食べたい」という方には、やや不満が残るかもしれない。
 普段は飲まない生ビールを2杯飲み、あれこれ昔話にふけるうち、お腹もすっかり満ち足りた。
(5,000円強くらいか…)と思って会計をしたら、約6,500円。ただし、ネットで得たクーポン券で一人分で500円が割引され、実際に支払ったのは5,500円だった。静かな落ち着いた雰囲気の中だから、まあ妥当な金額だろう。
 帰ってから伝票を調べると、「お通し、500円/一人」「深夜料、総計の5%」とあり、これが胸算用とのズレの要因である。この二つを別会計とする居酒屋って、もしかすると少ないかもしれない。外食はほとんどしないのでよく分かりませんが。


 店を出ると7時。まだ宵の口で、「コーヒー飲んで帰ろうよ」と妻が誘う。寒い表には出ず、階段を下って地下道からそのままパセオ(札幌駅地下街)に抜けた。
 マップで調べると、かなりの数のコーヒー店がある。いまさら歩き回るのもタルいので、一番近くにあった店に入った。
 妻はサクラアイス付ケーキセットを、私はコーヒーだけを頼んだが、オマケの手焼きクッキーが2枚ついてきた。

 居酒屋の支払いは私で、ここでの支払いは妻。行き帰りの交通費も妻が負担した。このへんのイーブンな案分バランスは、恋人時代と全く変わらない。妻に独立したサイフがあるからこそ、こうしたことが叶う。
 結婚前から妻は、「支払いは男の裁量」などという古い概念からは遠い価値観の持ち主で、そこは私が信頼を寄せる大きな要素のひとつであった。

 すっかり陽の暮れた夜道を二人で歩いて家に戻ると、9時少し前。夫婦の新しい思い出が、またひとつ積み重ねられた。よき一日であった。