2008年3月30日日曜日

33年目の春~中編

(前回の続き)
 帽子売場をあとにした私たちは、食器売場へとむかった。デパートの食器類は高いが、デザインに秀でた物が多く、夫婦茶碗や夫婦箸はほとんどデパートで買う。飽きずに長持ちするので、結局はお買得なのだ。
 箸をしばらく取り替えてないと妻が言うので、あれこれ見繕う。台所用品は若い頃から、たいてい二人いっしょに品定めする。

 1,000円以内という予算とデザインのバランスのとれた品が見つからず、結局買わないことになる。前回買った箸は1年以上使っているが、まだそう傷んではいないので、無理はしない。


 売場のワゴンセールに、1個100円の箸置きを多数発見。今年の正月に子供たちが帰省した折、箸置きが足りずに何かのオマケでもらった物で間に合わせた。必需品ではないが、結構好きなグッズで、価格が安い割に生活を豊かにしてくれる。
 河原の自然石を探すのも「縄文暮らし」には似合っている気もしたが、最近はすっかり出無精になり、アウトドアライフとはとんとご無沙汰。ガソリンの高騰で、わざわざ拾いに出かけるより、ここで買った方が安くつくし、結婚33周年のささやかな記念にもなる。

 あれこれ見繕って候補を絞り込み、最後は写真の二つに落ち着いた。渋くてさり気なく、落ち着いたデザインが自然素材の多い我が家に良く似合っている。
 その後、目的の居酒屋近くの西武デパートで、妻がまたまた財布をみたいというので、しばしつきあう。そうこうするうち、時間は夕方5時を回った。開店時間だ。

 一度も行ったことのない店なので、場所が分からず、地下鉄に降りる階段をウロウロしていたら、予期せずして、街角のゴミを拾う和服を着た3人のパフォーマンス集団に遭遇する。
 背中にしょった竹カゴに、道のゴミを火バサミで拾って入れるのだが、その拾い方が一つの「型」になっているのがミソ。まるで芝居の「見栄」のようで、キマっている。

 新聞やテレビで噂は聞いていたが、直に見るのは初めて。その志は私がたまに仕掛ける路上ライブと、どこかで通ずる。いわば「同士」のようなものだ。
 思わず「おぉ~っ」と声をあげて妻に教えたら、相手も気づき、礼を返してきた。すかさず、「ご苦労さまです」と声をかけ、妻は賛辞の拍手を贈った。ひとときの交流である。

 さて肝心の店はどこだろうと探すが、どこにも見当たらない。もう一度階段を昇ってみると、パフォーマンス集団と出会った階段の踊り場付近に、地下街に通ずる別の入口がある。挨拶に気をとられ、見落としていた。
 入口を抜けてすぐの場所に、目的の居酒屋「花ごころ」はあった。
(次回で完結です)