歌そのものはかなりこなれてきて、いつでも人前で披露できる状態になった。あれほど悩んでいたのがウソのようで、自分に向いている歌だと思い始めた。ゲンキンなものである。
難しい曲調に惹かれ、あれこれ調べているうちに、北原白秋の持つ世界そのものに、改めて興味を持った。
試みに、手持ちの電子楽譜ファイル(パソコンのデータベースファイル)で検索してみると、北原白秋の作詞による私のレパートリーは、以下の4曲あった。
「城ヶ島の雨」「ペチカ」「この道」「砂山」
どの歌にも独特の世界観があり、ジャンルで分けるなら、「日本歌曲」ということになろうか。最近打ち込んでいる叙情歌の世界からも遠くない。
他にも歌える曲があるはずと思い、さらに調べを進めてみると、以下の曲が見つかった。
「ゆりかごの歌」「待ちぼうけ」「あわて床屋」「ちゃっきり節」「からたちの花」
歌詞を集めてちょっと練習してみたら、ほぼいける。「からたちの花」だけは例外で、「城ヶ島の雨」ほどではないが、かなり手強い。
城ヶ島の雨と同様、リズム感覚を無視し、気分のおもむくままに歌ってみると、なぜかうまくゆく。気ままに歌うのが、北原白秋を制覇するコツなのか。
実はあるところから、「MCを中心にしたコンサートをやってみないか」との打診がある。まだ構想の段階だが、曲にまつわるトークを6〜7分、曲を3〜4分といった配分で、合計1曲10分を割り当てる。
全体をひとつの世界観で貫き、1時間強のトークライブに仕立て上げる、というもの。
トーク中心のライブそのものは決して珍しくはないが、問題は構成。「作詞者がすべて同じ」というのは、願ってもないキーワードではないか。その作詞者が日本を代表する詩人、北原白秋ならなおさらだ。先にあげた9曲は、バラエティに富んでいて、世によく知られた曲。構成もしやすい。
いつもは曲中心で、MCは1分以内、極力短くするよう努めているが、その全く逆をいくライブ。切り口としては非常に面白く、好奇心をそそられる。実現するといいな。