2008年5月9日金曜日

ぐるり

 入院中の父の容態が急変し、あっけなく息を引き取った。5月7日午前のことだった。

 93歳という高齢で、脳挫傷で倒れてから2年半という長い療養だったから、やむを得ないことなのだろう。強靭な体力と精神力で、よくぞここまでもったものだと、息子ながら感心する。主治医の先生からも同じ主旨の賞賛の言葉をいただいた。

 長く患った割に死際は苦しむこともなく、死顔も出棺間際まで穏やかで、まるで生きているように美しかった。父にとって、悔いのない人生であった証のように感じられた。天寿をまっとうした。


 あいにく友引が重なり、亡くなった当日に通夜、翌日に告別式という慌ただしい日程だったが、幸いに2日間とも穏やかな天候で、すべてが終わった昨夜からはずっと雨模様。結果的に良かったと思う。

 葬儀は母の希望もあり、家族だけのつましい密葬で執り行った。通夜は父の遺体の横に私も布団を並べ、朝が来るまで父と心の会話を続けた。
 葬儀の段取りも含め、奔走した2年半だったが、息子として悔いなく役目を果たせたと思う。「大きな肩の荷がおりた」というのが正直な気持ちだ。

 昨年末にできた「ぐるり」というタイトルのオリジナル曲がある。「輪廻転生」という壮大なものをテーマにした曲で、父のことも意識のどこかに置いて作った。
 すでに人前で何度か歌っているが、改めてこの場で父への鎮魂歌として捧げたいと思う。

『ぐるり』   詞/曲:菊地友則

  漆黒の空から落ちてくる 光る雨のしずく
  森を潤し 街をなぐさめ
  道をなぞって やがて海に注ぐ
  ぐるり ぐるり ぐるり ぐるり
  ぐるり巡ってつながっている 世界が

  紺碧の空に流れてる 愛しいあなたの声
  星を励まし 影に寄り添い
  風を集めて やがて土に還る
  ぐるり ぐるり ぐるり ぐるり
  ぐるり廻ってつながっている 命が

  茜の空へ消えて行く 燃えて砕けた想い
  あなたの涙は 無駄にはならない
  あなたの汗は いつか光に変わる
  ぐるり ぐるり ぐるり ぐるり
  ぐるり巡って還ってくる 元へと

  あなたの涙は 無駄にはならない
  あなたの汗は いつか光に変わる
  ぐるり ぐるり ぐるり ぐるり
  ぐるり廻ってつながっている 全てが 全てが