2020年11月21日土曜日

思い出うちわ復活

 結婚後1年弱を経た春のこと、当時勤めていた汚水処理系設計施工会社で、高松への現場辞令が出た。東京本社勤務だったため、単身赴任を打診されたが、妻を伴う転勤を願い出て受理された。
 直後に妻の妊娠が発覚。そのまま四国に向かい、現場完成までおよそ8ヶ月を過ごした。

 文部省直轄の難工事だったが、慣れぬ南国生活にも耐え、無事に完成。その後本社設計部への復帰辞令が出て高松を離れることになったが、短い四国暮らしの記念にと、当地の名産「丸亀うちわ」を1本買った。


 かなり高価だった記憶があるが、長年の酷使で紙は破れて骨も折れ、補修しつつ使っていたが、あまりの傷みで最近では出番も減った。
 そんなとき、100均ダイソーで大サイズの和紙が手に入ることを知り、地紙を自分で張り替えてみようと思い立った。

 最初に全体を水にひたし、古い地紙を全て取り去って骨だけにする。ダイソーで610×620の赤い手もみ和紙を入手した。これが夏ころのハナシ。
 行政の無策による新型コロナの爆発で、札幌は10万人あたりの新規感染者がダントツ全国一の危険地帯。欧州なら即時ロックダウンレベルで、感染リスクの少ない平日の空いている時間に、車で食品や日常雑貨の買い出しを恐る恐る済ませる日々で、恐ろしくて出歩くこともままならない。
 こんなときは家に引きこもって読書や歌、手仕事にふけるに限る。うちわの骨に地紙を張り直す時機到来だった。


 小麦粉大さじ1を水100ccに溶き、弱火で混ぜながら煮詰めると糊ができあがる。学生時代に弓道をやっていたが、その時に道場でやった的張りと同じ要領だ。
 調べてみて分かったが、45年前に買った丸亀うちわは、「一文字」というタイプと知った。地紙は骨全体に張ってやればよい。

 和紙を骨の大きさで2枚切ったあと、骨と地紙の両方に糊を刷毛で塗り、張りつけてブラシでこする。裏返して同じ要領でもう1枚を張る。
 骨に合わせて地紙を切り取ったのち、幅2センチで和紙を細く切り、糊を塗って補強用の「へり紙」として周囲に張った。


 その後、暖房ボイラの上に吊るして乾燥させる。夜半までにほぼ乾いた。
 長い月日で骨が欠損し、張り直しても形がシンメトリーにはならず、いびつである。だが、すし飯用として使うに支障はなさそうだ。懐かしき思い出の復活である。