安全な広い通りに出て、さあ写そうかと辺りを眺めたら、先程の鮮やかな風景はあとかたもなく消え去っていた。この間、わずか数分である。
はかなく、そして美しい時間は、ほんの一瞬なのだと思い知った。
家に戻ると、「切ない夕暮れ」という言葉がぐるぐると巡り始めた。写真には残らずとも、頭の中の印画紙には、先刻の風景がはっきり焼き付いている。傍らの紙にイメージを素早くメモする。ほぼ同時にメロディが落ちてきた。
いわゆるサビの部分は簡単に出来たが、その前後を構築するのにかなりの時間を費やした。昨日は仕事の合間、ずっとその作業に没頭した。忙しいときに限って、曲作りの神はしばしば微笑む。
昨夜遅くに、どうにか曲としての形になった。サビの前後を無理なくつなぐために、これまで一度も使ったことのないボサノバ風のリズムパターンを使った。曲の体裁が整った大きな力がこれだった。
淡い秋の空気感を表すのに、これまた一度も使ったことのない「Dm6」「Aadd9」というコードも使った。
僕は読みかけの本のページに 朱いしるしをつける…♪
曲のテーマは、「心につなぎ止めておきたい、ひとときの時間」。ほぼ固まっているステージ構成のやり直しになってしまうが、来月実施予定の自宅コンサートで歌うかもしれない。