2025年3月28日金曜日

金婚旅.4《渦巻いて旅仕舞い》

  (「金婚旅.3」からの続き
 金婚旅行最後の4日目。5:50に波音で目覚めてカーテンを開けると、鳴門海峡からまさに朝日が昇り始めたところ。旅の終わりを彩る、思いがけないご来光だった。
 未明に瀬戸内海地区でかなりの雨が降り、山火事が収束へ向かったことをテレビで知る。前日は添乗員の要望で折り畳み傘を携行しつつの観光だったが、結局雨には降られなかった。この4日間、天候にはまずまず恵まれた。


 7時からいつものパターンでバイキング朝食を食べ、8:55にホテル前を出発した。最終日の予定は少なく、バスの移動距離も短い。

 10分ほどで鳴門公園駐車場に到着。海岸に通ずるトンネルに高さ制限があり、土産物店が運行するマイクロバスに乗換えて千畳敷展望台に着くと、目の前に鳴門海峡が広がっていた。



 ここでの自由時間は30分。鳴門海峡にかかる大鳴門橋と、橋桁の間に渦巻く渦潮が見渡せるが、距離がやや遠く、展望台もそう高くないせいで、渦潮の豪快さを目の当たりにすることは叶わなかった。

 近くには渦潮を間近で見られる観潮船や、歩いて大鳴門橋の遊歩道を渡り、ガラスの床から45m直下の渦潮が望める大鳴門橋遊歩道 渦の道などもあったが、なぜか見学ルートには入っていない。
 2日目のしまなみ海道ウォーキングを終えたばかりで、似た企画を避けたのか?渦潮は高松に住んでいたときにも見逃しており、今回期待していたので残念だ。
 妻は諦めきれずに展望台にある望遠鏡から渦潮観察を試み、それなりに楽しんでいたのが救い。


 土産店で鳴門ワカメなどを買い込み、再びマイクロバスから大型バスに乗り継いで、この旅最後の訪問地となる大塚国際美術館へと移動。
 時計は9:45で、ここでの滞在時間は自由昼食を含めて3時間と長い。

 建物は急な傾斜地にあり、入口からまず長いエスカレーターに乗り、降りたところがB3Fの展示場になっている。古代の美術展示から始まり、階を上がるにつれ新しい美術展示へと変わってゆく趣向だ。


 1000点余の西洋名画を原画から直接スキャンし、特殊技術で陶板にオリジナルサイズで転写して焼いているという。フラッシュや三脚を使わなければ写真撮影もOKで、商業目的以外の使用も可。
 陶板製なので「触れてもよい」とのことだったが、ちょっと遠慮があって間近で観るだけにした。

 10時ちょうどから、仕切りや階段でざっくりと区切られたギャラリーを順に回る。B3F展示室は古代&中世美術の作品が中心で、とにかく広くて絵画の数が膨大。
 壺類に描かれた絵画もスキャンして展開され、平面で観られる工夫がしてある。古い美術品の知識はほぼなかったせいもあり、つい魅入ってしまう。一巡するだけで1時間が経過した。


 11時からB2Fへと移動し、ルネッサンス&バロックを中心に構成した展示室を矢印に従って回る。
「受胎告知」をテーマにした作品群から始まり、ボッティチェッリの「ヴィーナスの誕生」、フェルメールやブリューゲルの作品群など、好きな画家の作品が目白押し。

「最後の晩餐」「モナ・リザ」などの人気作品前ではボランティアガイドが説明していて、多数の見物者が集まっていた。人垣越しに作品は見届けたが、写真撮影はパス。


 B2Fを一通り観終わると、妻が「お腹が空いた」と訴える。時計はすでに11:45。朝食から5時間が経っていて、その間何も食べていない。
「とにかく観るだけ観て、昼食は空港に着いてからにしては?」と添乗員から提案はあったが、空腹でこれ以上歩けそうにない。

 展示室と屋外の睡蓮池の間に「Giverny カフェ・ド・ジヴェルニー」というカフェレストランがあり、ここで昼食をとることにした。

 ボッティチェッリの絵画を模したホタテ型の皿に盛られた「ヴィーナスカレー ¥1,100」を食べる。大盛りで具も多く、サラダや漬物もついていて美味しい。ようやく一息つけた。


 食べ終わって少し元気が出て、12:10からバロック&近代の作品が中心のB1F展示室へと移動。バスの集合時間は12:55で、残り45分しかない。
 ゴヤやゴッホ、ドラクロワの「民衆を導く自由の女神」、マネの「笛を吹く少年」、印象派の作品群、クリムトやムンクなど、馴染み深い作品を精力的に観て回る。好きなルノワール周辺が割と空いていて、じっくり観られてよかった。

 残り時間に追われ、最後に現代作品を展示する1Fに移動。ここでの作品は少なく、ピカソのゲルニカだけを見届けて見学終了とした。



 駆け足だったが、古代から現代に至るまでの美術作品を系統的に観られたのはよかった。世界各地に散らばっている著名な画家の作品が、まとめて観られるのも魅力。
 ただ、大きなサイズの絵にはつなぎ目があり、やはり本物とは異なる。サイズや色合いは実物同様に再現されているので、絵画の持つ空気感のようなものは、充分に伝わってくる。


 バスは時間通りに美術館を出発し、13:20には最寄りの徳島空港に着いた。添乗員が21人分のEチケットをそれぞれ手配してくれ、4日間を共にした運転手さんにも別れを告げて帰路につく。
 搭乗便はメンバーによって異なり、14:45に第1グループが日本航空で先発し、私たち新千歳空港グループは15:30出発のANA。
 行きは荷物を機内持ち込みとしたが、帰りは土産物でバックが膨らみ、サイズがぎりぎり。新千歳まで一気に運んでくれるというので、手荷物として預けることにした。

 風の影響で飛行機が遅れ、飛び立ったのが15:50ころ。乗り継ぎの羽田着陸間際にも風や空港の混雑でルート迂回を余儀なくされ、東京タワーの真上を通って20分遅れで到着。着陸場所がターミナルから離れていて、送迎バスに乗ったが、案内不足で乗り継ぎにちょっと迷った。
 最後の飛行機は羽田発18時。こちらも飛び立つまでにかなり遅れ、さらには山形上空あたりで経験したことがないほどの激しい揺れ。配られた珈琲がコップからこぼれ出すほどだった。


 最後でハラハラしつつも、20時に新千歳空港へ無事着陸。気温は3度で、出発時の徳島が19度だったから、一気に16度も下がった。
 手荷物を受け取るまでの時間に、妻は夕食を探しに出る。どうにかローソンで巻き寿司を入手し、格安駐車場の送迎バスに乗って、ようやく車までたどり着いた。冬衣に着替えるのも面倒で、20:40にそのまま出発。料金は4日で2,200円と、文字通りの格安である。

 暗い高速を慎重にひた走り、自宅到着が21:30。4日間暖房を点けなかったせいで、室温はわずか9度しかなく、暖房ボイラを最大にして終夜運転させた。
 記念すべき金婚旅行は数々の思い出を胸に刻み、こうして無事に終わりを告げた。

(4日目の歩数=10,490歩)
・4日間の総歩数=42,019歩(約30km)