2025年3月25日火曜日

金婚旅.1《山火事にもめげず》

 今年で結婚50周年の金婚を迎えるのを機に、夫婦で3泊4日の記念旅行に出かけることにした。
 構想は数年前からあり、実施の前提として2人そろって健康でいること、親の介護などの諸問題がないことがあった。
 年が明けて期日が迫り、私の腰痛以外に大きな障害はなく、どうにかやれそうだった。日程は雪がほぼ解け、年度替わりの諸活動も峠を越す3月末と決める。
 行き先は以前から候補にあった瀬戸内方面。新婚旅行が鷲羽山〜倉敷周辺で、結婚2年目に現場赴任で9ヶ月間、高松に住んだこともある。20歳の自転車旅行の折にも瀬戸内沿岸を走っていて、いろいろな意味で関わりの深い地域だった。
 50年目にして思い出の地をたどり、人生を振り返るのも悪くない。

 当初は格安パックで航空機とホテルだけを確保し、移動はレンタカーでやる手段を考えたが、車の長時間運転に不安を感じて断念。
 ネットで旅行代理店各社のプランを慎重に吟味のうえ、旅行意図と予算に最も近いH社の「小豆島と大塚国際美術館 ちょっと贅沢な瀬戸内ぐるり5県・15の味覚4日間」という長い名のコースに最終決定した。これが1/12のこと。
 最大の問題だった私の腰痛は、指圧やストレッチを中心とした対策が効いて徐々に回復。最終日程表が届いたのは3/18で、書類ではなくメール添付のpdfファイル。これも時代かとプリントアウトし、スマホにも送って随時見られる状態にした。
 久しぶりの長い旅行で、1週間ほど前からあれこれ準備。気温差が15度以上もある地域への移動で、衣類の調整が難しかった。

旅立ち前の新千歳空港

 あっという間に当日がやってきて、緊張と期待で4時間ほどしか眠れず、妻は4:30から昼食のサンドイッチ作り、私は5:30に起きて4日間の留守に備え、防犯関連の各種対策をやった。
 自宅出発は7時。新千歳空港発9:30の便だったが、集合は1時間前である。移動の負担を軽くするため、自宅から車で高速に乗り、空港周辺の格安駐車場を利用する。

 高速の事故渋滞情報は起床直後に確認済みで、1時間で空港駐車場にすんなり到着。循環送迎バスに乗って15分後には空港に入った。
 ここまでは順調だったが、肝心の集合場所「北海道ツアーデスク」が見つからない。迷ったすえ、空港職員らしき人に尋ね、ギリギリの8:30にようやくたどり着く。窓口で渡されたのはA4の紙に印刷された不思議な搭乗券らしきもの。
 どうやら「Eチケット」と呼ばれる代物らしく、右上のQRコードを自動チェックイン機にかざせば搭乗手続きが完了するという。もし紙をなくしても、番号等の情報を入力すれば乗れるらしい。航空機利用は長男の結婚式以来13年ぶりだったが、時代はすっかり進歩していた。

乗り継ぎの羽田空港で昼食

 予定通り9:30に千歳を飛び立ち、11:30に乗り継ぎとなる羽田に着く。ここで持参の昼食を慌ただしく食べ、12:15に目的地の松山空港へと向かった。

 ほぼ予定通り、14時に愛媛県松山空港到着。出発時の千歳は気温8度で冬支度だったが、到着した松山は25度の夏日。私はジャンパーのインナーを外し、妻も2枚の上衣を脱いで薄手に着替えた。
 空港出口でツアー旗を持った添乗員の中年女性が明るく出迎えてくれ、貸切バスでただちに出発となる。

松山空港に無事到着
4日間を共にする貸切バス

 最初の訪問地は今治タオル美術館。折悪しく今治では前々日に山火事が発生していて、美術館周辺にも迫りつつあった。
 当初は高速経由で向かう予定が、通行止めで一般道に変更。やや遅れて15:30に到着し、見学そのものに支障はなかった。


 国内タオル生産の5割を占めるのが今治で、製造工程やタオル製品をアートとして展示している。
 ムーミンやピーターラビットなど、よく知られた内外のキャラクラー製品が要所に展示され、楽しめる工夫がされている。


 入口の下層階から順路をたどり、最上階にある庭園に着くと、山火事が間近に迫っていて驚いた。時折赤い炎もあがっていて、条件が悪ければ見学は叶わなかっただろう。
(今治の山火事は3/31に鎮圧されました)
 16:20までに無事すべてを観終わり、この日の夕食をとる「風のレストラン」へと向かう。

最上階の庭園から見えた山火事

 バス移動にはそれなりの時間を要したが、添乗員から窓外を流れる名所旧跡、歴史などについて随時マイクで説明があって退屈しない。

 今回のツアーメンバーは21名で、バス定員の半分ほど。席には充分に余裕があってくつろげた。
 参加者の地域別は札幌7
、旭川4、甲府6、青森秋田など4名。企画はH社の札幌支店とあって北からの参加が多いが、ほどよくバラけている。
 年齢層は70代前後が多く、男女2人が7組、女性2人が3組、男性1人といった内訳。時間に余裕のできた高齢者が中心と思われた。

「風のレストラン」から臨む来島海峡大橋

 1時間ほど走って、17:15に風のレストランへ着く。翌日の旅程となる「しまなみ海道」のスタート地点にあり、来島海峡が一望できる全席オーシャンビューが人気の店だ。
 黄砂の影響でやや霞んでいたが、全面ガラス張りの席から臨む来島海峡大橋の展望は見事。

 ここでツアーの売りのひとつ、4つの味覚「愛媛真鯛のカルパッチョ」「生ハム」「スペインオムレツ」「愛媛真鯛と海老のソテー」を味わう。ご飯がやや冷めていたが、ツアー最初の食事としてはまずまずか。


 18時に食べ終わり、外の撮影スポットで添乗員に夫婦2人の写真を撮ってもらう。
 再びバスに乗り、1日目の宿泊先となる「今治国際ホテル」へと向かった。


 1時間後に到着し、まずは温泉で疲れを癒やす。四つ星ホテルとあってか、客室を含めてどこも清潔で洗練されている。

 取り立ててやることもなく、自販機で買ったビールで妻と乾杯したのち、早めの22時に床につく。寝不足で疲れているはずが、興奮状態と暑さでなかなか寝つけない。
 掛け布団の下端をめくって暑さ対策を施し、スマホに転送してあった山本周五郎の小説を読むうち、1時過ぎにようやく眠りについた。

(1日目の歩数=7,416歩)(旅日記2日目に続く