5ヶ月ぶりの新聞投稿が採用になった。以前に比べて投稿意欲は下がっているが、今年は2本投稿していずれも採用。結果は悪くない。
7〜8月は「夏の涼味」と題したテーマコーナーがあり、さまざまな投稿で賑わっていた。読み進むうち、新しいスタイルの投稿をふと思い立つ。よくあるエッセイふうや意見提言ではなく、掌編小説ふうの切り口で綴るのだ。おそらく過去に例はないが、うまくゆけば投稿の新境地を切り開ける。
テーマは中2のときに同じクラスになり、急速に仲良くなったS君に関する思い出話だ。
5人兄弟の長男だったS君は、家計を助けるために新聞配達をやっていた。日々を漫然と過ごすだけの私には、彼がすごくオトナで眩しく見えた。少しでも近づきたくて、夕刊の配達を手伝ったりした。
夏になって「家に遊びに来いよ」と誘われた。喜んで行ってみると、S君は自分で木造住宅の屋根裏を改造し、個室にして使っていた。
自分の部屋がないことを不満に思っていた私だったが、親をあてにせず、自力で軽々と問題を解決してしまう彼を心底すごいと思った。
「俺が稼いだ金で買ったんだ。遠慮しないで食え」と、S君はたくさんのお菓子と冷たい井戸水で作った粉末メロンソーダを並べてくれた。上にクリームも浮いている当時の人気商品で、欲しくても我が家では買ってもらえない。
小さな弟や妹がテーブルを囲み、じっとお菓子を見つめている。(自分には食べる資格がない…)そう思い、「お腹空いてない」とウソを言って、メロンソーダだけ飲んだ。お菓子はあとで兄弟仲良く食べるだろう。それでいい。
初めてのメロンソーダは美味しかった。S君がくれたかけがえのないごちそうだ。