2021年10月4日月曜日

「氷点」を読んだ

 緊急事態宣言が解除され、北海道内の新型コロナ新規感染者数は一桁台まで減った。第6波がやってくる前に、妻が以前からぜひ行きたいと願っていた旭川の三浦綾子記念文学館に車で出かけようと、いろいろ計画を練っている。

 三浦綾子の作品は「塩狩峠」「天北原野」を読んだが、代表作の「氷点」はなぜか読む機会がなく、いまに至る。どうせ出かけるなら読んでおくべきと本棚を探したが、「続・氷点」はあるのに、肝心の「氷点」が見当たらない。
 出版直後に買ったという妻に確かめると、誰かに貸したきり戻ってこないという。50年以上も前の話で、あきらめて市の図書館をネット検索した。
 多くは前後編2冊に分かれていたが、近隣の地区センター図書館に初期完全版が奇跡的にあり、貸し出し予約も入っていない。ただちに借りに行くことにした。これが2日前のハナシ。


 借りたその夜から読み始める。新聞に1年間連載された長編で、数えてみると原稿用紙1200枚余の大作。古い出版のせいで文字も小さく、読み終えるまでには相当の根気が必要と思われた。

 ところが、いざ読み始めるとスイスイ進む。その夜のうちに1/4にあたる300枚ほどを読み終え、翌々日、つまり今夜までに残る900枚を一気に読み切った。日平均400枚相当で、これほど短期間に大量の文章を読んだ記憶がない。
 21年前に企画出版された自分のノンフィクション小説が350枚ほどで、当時さまざまな人から「一晩で一気に読み終えた」との感想をいただき、いまひとつ実感が湧かなかったが、いまごろになってその心境を理解した。

 面白いこと、読みやすいこと、文体が平易でリズム感があること、それでいて深く訴えるものがある。小説の原点がここにある。各種描写もきめ細かい。ぜひ見習いたいと思う。


 図書館に行く途中の道端で見つけた野の花があり、帰路に摘んでくるつもりでいたが、すっかり忘れていた。3日間引きこもっていたせいで、運動不足だった。やや遠いが、歩いて摘みに行く。
 この時期に野辺でよく見かけるが、名前は分からない。いつものように備前焼の花瓶に活けた。アカツメクサに似ているが、もっと丈が高い。園芸店では売っていない気がする。