母の一周忌だった。コロナ禍の真っ最中に亡くなり、さまざまな障害を乗り越えつつも、なんとかこの日を迎えることができた。実家の行く末など、まだ完全に片がついたわけではないが、ようやく一区切りついた思いでいる。
コロナ禍の収まる気配が一向になく、市中には感染力の強い変異種なるものまではびこり始めた。
葬儀や法事はたとえ小規模でもクラスターのもとだが、一周忌は大きな節目で、さすがに読経CDを流して済ませるわけにはいかない。万全の感染対策を施して臨んだ。
お坊さんの都合で法要開始は11時半と決まる。昨年末から連絡してあったが、念のため前日にショートメールでスケジュール確認を送信したら、絵文字顔文字入りの返信がきて驚いた。
通夜と葬儀をお願いしたお坊さんで、お寺を持たないフリーランス僧侶とあってか、感覚が新しい。
遠方の姉と市内の姉は全て不参加。全員高齢で、潜在的な健康不安もある。移動したり集まったりするのは、リスクがあり過ぎる。死者の弔いも大切だが、まずは生きている者の安全が第一である。
会場の設営は前日までにほぼ終え、当日になって換気用のパッシブ排気口を全開にし、果物を盛りつけて供えた。学生時代の友人からは供花が、姉からは供菓子が前日までに届いている。
10時半に喪服に着替えてスタンバイしていると、開始30分前に市内在住の長男が自転車でやってくる。布マスク姿のため、玄関に準備しておいた不織布マスクに替えてもらい、手指も消毒。
開始5分前にお坊さんが自家用車で現れ、自主的に手指の消毒をやってくれた。
11時35分から読経開始。読経中もお坊さんはずっと黒いマスク姿だった。20分くらいで終わり、少しだけ言葉を交わしたが、コロナ禍でしばし途絶えていた法事の依頼が、最近になってようやく復活の兆しだとか。ただ、コロナ対策は欠かせないという。
お礼のお布施と共にお茶を勧めたが、こちらもコロナ禍を理由にご辞退。滞在はごく短時間だった。
法要中は家族3人(私と妻と長男)もずっと不織布マスク。食事会の類いはもちろんない。念には念を入れて、終了後に家の中を消毒液で除菌処理した。
コロナ戒厳令のもとでやれるぎりぎりの法要だったかもしれないが、ともかくも終わってほっとした。