2006年8月10日木曜日

侘助

 居間のテーブルの上には、動物を模した爪楊枝入れがずっと置いてある。はっきり記憶にないが、20年程前に私が作ったものだ。名前がちゃんとついていて、「侘助」という。
 子供たちがまだ小学生で、PTAバザーの売物に各家庭から何かもってくるよう連絡があった。子供が喜びそうなもので、出来れば手作り品、という難しい注文である。
 そこで子供たちといっしょに、動物を模した小物入れを作ることにした。当時仕事で使っていたカラーインクの空ケースを中心に使い、トイレットペーパーとヤマト糊を水で練って回りにくっつけ、子供たちの自由なイメージで動物の形を作らせた。
 一晩乾燥させ、絵の具を塗って最後に木工用透明ニスで仕上げた。


 5~6個作ったはずだが、私が作った中で、この「侘助」の出来があまりによく、売るのが惜しくなった。
「これはウチで使うぞ」
 そう子供たちに宣言し、そのまま時が過ぎ去った。あちこち傷んできたが、ときどき掃除したり、内部の仕切板を交換したりしている。

 リスだかイタチだかモモンガだか分からない風貌だが、とぼけた表情がなかなか良い。ちなみに、「侘助」の由来は、身体の色が茶道で使う抹茶に似ているから。ツバキにも同じ名があると聞いたが、20年余の時を経た我が家の「侘助」は、たぶん私自身の分身だ。