2022年9月8日木曜日

手術前にライブ

 6月に2年半ぶりに人前で歌ったデイサービスから、3ヶ月後のライブを依頼されていた。当時はまだ新型コロナ感染が落ち着いていた時期で、翌月から新型コロナ第7波が爆発。
 コロナの勢いはなかなか収まらず、ライブの実施は難しいように思われた。しかし、引き受けた以上やる前提で準備しなくてはならない。

 前回のような長いブランクはなく、練習に本腰を入れ始めたのは8月中旬から。折悪しく定期検診で胃ガン宣告を受けたが手術は9月下旬で、ライブ自体に支障はない。
 施設からは特に連絡がなく、予定の4日前になってこちらからスケジュール確認すると、予定通り9/8に実施するという。日々の練習を怠らずに正解だった。


 時間は前回と同じ15時開始。14時5分に家を出て、40分で先方に着く。前回開拓の裏道ルートでも平日のせいか、やや時間がかかった。
 施設はちょうどおやつタイム。椅子のセッティング替えなどあって、開始は15時15分あたり。秋メニューを中心に、アンコールを含めて50分で15曲を一気に歌った。
「高原列車は行く」「二輪草」「炭坑節」「瀬戸の花嫁」「二人は若い」「高校三年生」「荒城の月」「北酒場」「星影のワルツ」「涙そうそう」「古城」「つぐない」「丘を越えて」「また逢う日まで」「時計台の鐘(アンコール&リクエスト)」


 聴き手はおよそ30名。前回と曜日が異なるせいか、顔ぶれは大幅に入れ替わっている。マスクを着用し、聴き手との距離は広くとって感染に配慮した。

 聴き手も当然ながら全員がマスクで、表情が読みにくい条件は変わらない。1曲ごとの拍手で反応をうかがったが、全体的に大人しいなかで、手応えがあったのは「二輪草」「高校三年生」「荒城の月」「丘を越えて」「また逢う日まで」あたりか。
 前半の喉の調子はいまひとつで、特にロングトーンの音程が不安定だった。だましだまし進めて、後半は尻上がりに回復。不織布マスクの新品を使ったせいか、前回のような歌いにくさはなかった。


 ラスト曲を歌い終えたのが16時ちょうどで、係員がまとめようとしたら、利用者から「アンコールは?」の声が自然に湧く。
 準備していた「リンゴの唄」をありがたく歌おうとすると、最前列で熱心に聴いていて、ときに一緒に口ずさんでいた男性利用者から、「『時計台』をぜひに」との声があがる。
 思わず「裕次郎(「恋の町札幌」→出だしに時計台が登場する)ですか?」と問うと、違う、時計台の歌だよ、と重ねる。

 どうやら唱歌の「時計台の鐘」が希望らしい。過去のライブで何度も歌ったが、リクエストは一度もない。素早く電子譜面を検索すると、案外簡単に見つかった。
 5年ぶりに歌ったが、これが自分でも驚くほどうまく歌えた。求められると、普段持っている以上のパワーが歌に乗り移るものらしい。
 終了後、全員で記念撮影。移動してきたばかりの若い施設長さんから労われる。
 ライブ前に調べてみたら、最初の依頼が大腸ガン発症直前の9年前の夏。以降年2〜3回ペースでコンスタントに依頼があり、奇しくもこの日は20回目のライブだった。
 Xmasライブの打診もあったが、胃ガン発症と手術の予定を率直に話し、患部の進行状況がはっきりするまで、しばらく活動を休止することで了解をもらった。
 先日の本修繕ボラと同じで、ボランティアを続けるにも、まずは自分の健康が最優先である。