2026年10月31日土曜日

田中達也〜見立て展

 北海道立近代美術館で開催中のミニチュア写真家・見立て作家、田中達也の「MINIATURE LIFE展2」を観に行った。

 2017年NHK朝ドラの「ひよっこ」オープニング映像で初めて作品を目にし、本来の用途とは異なる日常品や食品を別の物に見立てるデザイン手法に興味を持った。
 BSアンテナの廃棄品をカエルに見立て、「パラボラ蛙」と名づけてリメイクした私の手法とどこか通ずるものを感じた。


 5年前に家族旅行で神田日勝記念美術館に行った際、孫娘が思いがけず興味を持ってくれたことがあり、今回もぜひ見せたかった。
 話の流れで長男のお嫁さんも一緒に行くことになり、13時半に車で迎えに行く。

 美術館近くのイオン駐車場に車を停め、少し歩いて14時10分に会場に着く。予めネットで買っておいたチケットで待ち時間ナシで入場。情報漏洩等で怖い面もあるが、やはりネットは便利だ。

「ボタンの木」

 順路に沿って観て歩く。入口にあるのはピンクの大きなボタンを桜に見立てた「ボタンの木」。ミニチュア展だが、ボタンは実物より大型の特別な品を使い、導入部でのオドロキを演出している。

 作品はガラスケースに入ったミニチュア現物のほか、写真撮影した拡大画像が横に掲示されている。
 わかりやすいのは拡大画像だが、現物のもつリアリティには、写真とは異なる独特の存在感がある。

「しばらくここで待ってクリップ」

 作品にはそれぞれ固有のタイトルと説明が添付されている。たとえば色とりどりのダブルクリップをベンチに見立てた作品なら、「しばらくここで待ってクリップ」といった具合。
 ダジャレ感覚のタイトルも多いが、作品そのものが限りなく遊び感覚なので、その延長であろう。

 使われている素材は、事務用品と食品、衣類の3つにざっくりと分別される。
 食品素材の場合、撮影してネット公開する分には問題ないが、長期の展示だと傷んでしまう。そのため、多くの作品に食品サンプルが使われていた。
 本物を使った一部作品には「撮影後に美味しくいただきました」との注釈が。ここでも作者のアソビ心を垣間見た。

「ハブ ア ライストリップ!」

 私が気に入ったのは「ハブ ア ライストリップ!」と称したごはんを雲に見立てた作品。
 素材を単に見せるだけでなく、背景と素材を上下二層に分け、上から光を当てて影も作品に取り入れている部分に、他にはない独創性を感じた。

 合計展示作品数は180だそうで、中ほどには唯一動きのある「おスシティー」が展示されていた。
 回転寿司店全体を近大都市に置き換えたもので、回る寿司は自動車に、積み上げられた皿がタワービルに見立てられている。

「おスシティー」

 北海道だけの特別作品もあった。牛乳瓶や牛乳パックを牧場に見立てたものや、「水曜どうでしょう」の農園を野菜で再現したもの等々。
 地元への気遣いを感じたが、作品と素材内容とが一致し過ぎていて、意外性には欠ける印象。

「No Use Crying Over Spilled Milk」
「失“パイ”は成功のもと」

 出口付近には「永遠に溶けない雪だるま」と題し、結婚指輪を重ねて雪だるまを表した作品が展示されていて、横で記念撮影も可能だった。

 数日前にNHK-Eテレの「おとな時間研究所」に田中達也氏が出演して語っていたが、今後はミニチュアに限定せず、もっと大きな作品も手掛ける構想があるという。出口付近にあった巨大な指輪は、その方向性を暗示するものではないか?

「永遠に溶けない雪だるま」

 思い思いが自由に会場を動き回り、あっという間に1時間が経過して全作品を見届けた。

 空腹を訴える孫娘をなだめつつ、車を置いたイオンまで小雨模様の道をテクテク戻り、フードコートで遅い珈琲タイムとなる。
 ドーナッツ、かぼちゃロールケーキ、鮭おにぎりなど、それぞれの好物を食べて、ようやくひと心地ついた。


 観終えたばかりの感想を互いに語り合う。
 孫娘は「辛い辛い水をくれ」と題した唐辛子をビル火災の炎に見立てた作品と、青いタオルを川に見立てた作品が印象に残ったという。
 お嫁さんは動物を使った作品が、私は先にふれた「ハブ ア ライストリップ!」がお気に入り。

 久しぶりに美術展に足を運び、よい刺激になった。ウンザリするほどの世知辛い世相が延々続くが、美術や音楽に代表される芸術全般は、疲れた魂を救済する貴重な存在に違いない。