関東在住の友人Tさんから連絡があり、北海道旅行に行くので会いたいが、都合はどうか?と打診があった。似た経緯で学生時代の友人夫婦が先週来訪したばかり。今月はこの種の話がなぜか多い。
Tさんはサラリーマン時代の1年先輩で、同じ独身寮で2年を共にした。年はTさんが2つ上だが、なぜか気があって、部屋にこもってよく話したもの。
結婚はTさんが先で、結婚式の受付を私が務め、翌年の私の結婚式には、今度はTさんが受付をやってくれた。結婚時の引っ越し荷物の搬送もTさんに頼んだ。
私たちは社内結婚なので、妻もTさんをよく知っている。結婚後もTさんの家に2度遊びに行き、家族ぐるみの付き合いが続いた。互いの転勤先が偶然同じ時期に大阪となり、Tさんの家に招かれたこともある。
私が会社を辞めて北海道にUターンしてからは年賀状だけの交流となり、70歳で年賀状を卒業してからは、それも途絶えた。
1ヶ月ほど前に番号不明の着信があり、恐る恐る応対すると、それがTさん。なんと44年ぶりの会話で、娘夫婦と共に北海道にやって来るという。10月はスケジュールが詰まっていたが、予定を空けて備えた。
宿泊先のホテルに私たちが行くことに決まる。先方の希望は午前中で、10時に着くとTさん夫婦がロビーで待ち構えていた。
実はTさんが病気のため、数年前から車椅子状態だと電話で知った。44年の時を経て、互いの風貌は変わってしまったが、当時の空気感のようなものは変わっていない。
持参のアルバムなどを見せあい、昔話を中心に懐かしく語り合ううち、あっという間の2時間が経過。Tさんは病気で言葉がやや不自由だったが、奥様がうまく通訳してくださり、会話に支障はなかった。 話は尽きず、どこかで昼食でも…、となったが、フロントで訪ねてもホテル内レストランは高級なコース料理のみ。いろいろ調べて、地下1階にあるスパ(入浴)施設で、軽食がとれると知る。車椅子での移動にも支障はなく、そこで昼食をとることにした。
靴を下足箱に入れたり、車椅子の車輪を清掃したり、男女別の移動経路をとるなどし、ともかくも簡単な昼食にありつけた。
食事中も話は途切れず、44年の時間は簡単には埋まらない。店内が空いていたこともあり、延々2時間も長居してしまった。
再開を約束して14時に解散。関東は遠く、互いに高齢者の域に突入している。悔いが残らぬよう、固く握手を交わして別れた。元気でさえいれば、また会う機会があるかもしれない。それは神のみぞ知る領域のハナシである。