細い記憶をたどると、私が最後に床屋に行ったのは結婚式の数日前。以来32年間、髪はずっと自分で切っている。ざっと試算すると、新車1台分くらいのお金は浮いているはず。
元々がくせ毛である私の髪は、誰が切ってもそう代わり映えしない。金と時間がかかり、いかにも「床屋に行ってきました」という散髪後の印象がイヤで、それが私を床屋から遠ざけた。
10年程前、「私の髪も切ってよ」と妻から頼まれたときは、さすがに驚いた。あまり自信がなかったが、いろいろ研究して腕を上げ、最近では「プロと変わらない」とまで言われるようになった。
私の趣味のひとつに、フォークのオリジナル曲作りがあるが、この妻の髪を切るシーンを歌った「夕映えの髪」という曲も数年前に作った。
写真は散髪セットである。一番高かったのは専用のハサミで、確か500円くらい。他はすべて100円ショップで入手。電動機器は一切使わず、ハサミ1本で勝負する。
妻の髪を切ってあげると、お礼に何かごちそうしてくれる。それが結構楽しみだったりする。お金以外にも、妻とのスキンシップ等々、さまざまな余禄がある。だから、これからも髪は自分で切る。