長く私の音楽活動を支えてくださる同年代女性のSさんから紹介され、Sさんと同じ町内にあるグループホームで歌うことになった。
コロナ禍があけて以降、デイサービスや公的空間で歌う機会はじょじょに増えたが、やや介護度の高いグループホームで歌うのは久しぶりのこと。長いブランクで以前までの定番パターンが通用するのか、一抹の不安があり、事前にSさんと選曲に関して打ち合わせた。
結果、「サン・トワ・マミー」「幸せなら手をたたこう」「星影のワルツ」「青い山脈」の4曲がリクエストとして挙がった。他3曲に比べて、「サン・トワ・マミー」だけがグループホームとしては異質の要望。熱いシャンソンファンが入居者にいるという。
予想した通り、時の経過で嗜好はじわじわと変化しているようだ。
開始は14時で、場所は過去に何度も歌っているSさん所属の町内会館そば。12時50分に家を出て、迷うことなく45分後には先方に着いた。
会場となる2階の食堂に案内されたが、予想よりも狭く、廊下の一部にも椅子が並んでいる。あとで知ったが、階ごとに1ユニット7名の入居者がいて、食堂に多くの面積は必要ないらしい。
スピーカーを後部の廊下に置くことで歌うスペースを確保。そうするうち、3階のユニットからも続々と人が集まってきて、聴き手は15名を超えた。 予定よりやや早くライブ開始。先方の希望通り、30分で11曲を歌う。(※はリクエスト)
「北国の春」「おかあさん」「ソーラン節」「バラが咲いた」「南国土佐をあとにして」「幸せなら手をたたこう※」「荒城の月」「ろくでなし※」「星影のワルツ※」「月がとっても青いから」「青い山脈※」
「春メニュー」と称して最初に提示したセトリから、リクエストに応じて3曲を入れ替えた。
最も早くリクエストのあった「サン・トワ・マミー」は、歌う直前なって入居者から「《ろくでなし》は演れないの?聴きたい!」との要望が突然出て、急きょ応じた。
1週間前の金婚旅行疲れがまだ抜けきれておらず、数日前から声枯れ現象が起きていた。
いつもなら黒豆茶を2週間飲んで喉の調整をするが、今回は旅のせいで期間が短い。やむなく前日から数年ぶりに喉の漢方薬「響声破笛丸」を服用。さらに「大根ハチミツ」も作って飲んだ。
各種対策にもかかわらず、出だし数曲は調子が悪かった。喉が不調だとギターのピッキングまで怪しくなる悪循環。
手探りの進行でも場の反応は悪くなく、自然発生の手拍子や掛け声がどんどん出てくる。それに後押しされるように、声もジワジワと復活してきた。
尻上がりに調子を出し、盛況のうちに終了。アンコールの雰囲気もあったが、最初ということもあってか、居合わせたSさんが場を収めてしまった。 撤収中に施設の担当者から、「7月にも同じ要領でやりたいので、歌いに来ていただけませんか?」と打診される。わずか3ヶ月後で間隔が短すぎる気もしたが、断りにくい雰囲気でフラフラと応じた。
次回は夏の曲中心で構成するにしても、場の嗜好が定番の演歌&民謡系のほか、洋楽の求めもあって、調整に腐心しそうな気配が濃厚。新たに工夫する楽しみができたと、前向きに考えよう。