途中には最新設備を備えた近代牧場と、いまは使われていないレンガ造の古いサイロとの、新旧の建物が見られる。
当然だが、あたりは堆肥のかなり強いにおいがたちこめている。多数の牛がいるから当り前なのだが、そのせいかこのあたりを散歩する人など、まず出会ったことがない。
いまはソバで有名な幌加内という厳寒の牧畜地帯で育った私にとって、堆肥のにおいは郷愁のにおいでもある。なぜか心が安らぐ。
道端に赤爪草の可憐な花を見つけた。確か牛の大好物だったはず。さすがに「牧場コース」である。これを食べた牛は、濃い乳を出すと言われていた。いまも食べさせているかどうかは分からない。
子供の頃、花を抜いて根元にあるミツをおやつ代りに吸った記憶がある。いい時代だったな。