車庫の一角に、冬だけ活躍してくれる簡易な地下ムロがある。かって北国の家には必ず地下ムロが納屋の隅などにあって、冬の間の食品貯蔵庫になったものだが、その現代版である。
まず物置棚の一番下を45センチほど掘り下げ、周囲をブロック2段で囲って、一番上には意匠としてレンガを並べる。
札幌の場合、凍結深度が45センチなので、このままだと中は氷点下となってしまう。そこで、内部に家の基礎断熱に使った厚さ50ミリのスチレン系断熱材(スタイロエース)を入れた。上部は同じ断熱材の50ミリと20ミリとを重ねて蓋をし、一番上は木製の蓋になっている。
測ってみると、外がマイナス10度でも中はプラス2〜3度をキープしている。冷蔵庫に入り切らない野菜、果物、ビールなどを入れているが、凍らせたことは一度もない。おそらく周囲の土もよい断熱材になっているのだろう。
高気密高断熱の住宅の悩みの種が、家の中に食品を置く寒い場所がひとつもないことだが、一般的には1〜2畳の食品庫のスペースを設け、周囲を断熱材で囲い、なおかつ換気扇を24時間運転させて低温を保つのが普通だ。
このやり方の場合、暖かい家の中から出入りできる反面、設置コストと運転コストが馬鹿にならない。内部温度もせいぜい10度くらいが限界で、食品の長持ちという一点では、地下ムロには叶わない。
簡易地下ムロの場合、貴重な屋内スペースを使わずに安いコストで済むし、換気扇の電気代も無用である。器用な人なら、DIYで簡単に作れるだろう。
欠点は物の出し入れ時に、いったん家の外に出なくてはならないこと。しかし、我が家のように車庫や物置への出入りを玄関から直接できるように工夫しておけば、ほとんど苦にならない。
この手法、設計を依頼してくる方にも勧めたいのだが、賛同者は現れそうにない。縄文暮しの真の理解者は、ごくわずかに過ぎないのだ。
《2014.10 追記》
その後、スチレン系断熱材は蓋部分の50ミリ1枚のみとし、壁部分は撤去したが、問題なく使えている。地熱の力が予想以上に大きいようだ。